本誌の記事で繰り返し登場する専門用語を、カテゴリ別に整理した用語集です。各項目から関連する記事へリンクしています。表記は一般的なものを採用し、読みが難しい語には振り仮名を付けています。
伝統と祭り
- 侘び寂び (わびさび)
- 日本の美意識を表す語。簡素さ、不完全さ、時間の痕跡を肯定的に捉える感覚の総称。茶の湯の美学の中核にある。茶の湯と沈黙の作法も参照。
- 茶の湯 (ちゃのゆ)
- 一碗の茶を点てて客人をもてなす総合芸術。所作、道具、茶室、会話、沈黙の扱いまでを含む。千利休(一五二二―一五九一)によって現在の形式が整えられた。
- 氏子 (うじこ)
- 神社の氏子区域に住み、その神社の祭礼を支える地域住民。年会費・寄付・人的労務を負担し、祭礼の運営主体となる。祭りはどう維持されているのかも参照。
- 盂蘭盆会 (うらぼんえ)
- サンスクリット語「ウランバナ」(倒懸の苦しみ)に由来する仏教行事。日本のお盆は、これと古代の祖霊信仰が重なって成立した。
- 五山送り火 (ござんのおくりび)
- 京都で毎年八月一六日に行われる、お盆の送り火の行事。大文字、妙法、舟形、左大文字、鳥居形の五つの山で火が灯される。
- 祇園祭 (ぎおんまつり)
- 京都・八坂神社の祭礼。七月の一か月を通じて行われ、山鉾巡行が特に知られる。ユネスコ無形文化遺産にも含まれる。
- 本地垂迹 (ほんじすいじゃく)
- 仏が日本の土地に神の姿を借りて現れたとする、神仏習合の中核概念。中世以降の日本の宗教観の基盤。
芸術と文学
- 陰翳礼讃 (いんえいらいさん)
- 谷崎潤一郎が一九三三年に発表した美学的エッセイ。日本の美意識を光ではなく陰影の設計として捉えた。現代の建築家はどう読むかも参照。
- 新作能 (しんさくのう)
- 明治以降、とくに戦後に新しく書かれた能の作品。文学者が台本を書くこともある。能は現代劇として成立するかも参照。
- 季語 (きご)
- 俳句で季節を指示する語。『歳時記』に分類・収録される。現代俳句では無季作品も増えつつある。
- 自由律 (じゆうりつ)
- 五七五の定型を離れた俳句。大正期の荻原井泉水らが『層雲』を拠点に展開した。
- 花鳥諷詠 (かちょうふうえい)
- 高浜虚子の提唱した俳句理念。自然と季節の客観的観察を俳句の本質と位置づける立場。
- 前衛俳句 (ぜんえいはいく)
- 戦後、金子兜太らを中心に展開した社会性・身体性を重視する俳句運動。無季や字余りを積極的に使う。
- 歌舞伎 (かぶき)
- 江戸時代初期に成立した大衆演劇。女形、隈取、見得などの様式美を特徴とする。ユネスコ無形文化遺産。
工芸と職人
- 塗師 (ぬし)
- 漆器の中塗り以降を担う職人。下地から上塗り、研ぎ出しまで、専門化された工程を通しで習得する。漆の木から椀までも参照。
- 地の粉 (じのこ)
- 輪島塗で使われる珪藻土の粉末。下地に混ぜることで、輪島塗特有の堅牢さを生む。
- 蒔絵 (まきえ)
- 漆を塗った面に、金や銀の粉を蒔きつけて文様を描く技法。平安時代に確立し、輪島・金沢などの産地で継承される。
- 楮 (こうぞ)
- 和紙の主原料となるクワ科の落葉低木。ユネスコ無形文化遺産に登録された三つの和紙(細川紙、本美濃紙、石州半紙)はいずれも楮のみを原料とする。
- 流し漉き (ながしずき)
- 日本の伝統的な紙漉き技法。粘剤(ねり)を加えた水のなかで簀を揺らし、薄く強い紙を漉く。和紙職人が消えるも参照。
- 柿右衛門様式 (かきえもんようしき)
- 有田焼の一七世紀の上絵付様式。乳白色の素地に赤・緑・青の絵付を施す。ヨーロッパ宮廷で熱狂的に収集された。有田焼四〇〇年も参照。
- 上絵付け (うわえつけ)
- 一度本焼きした磁器・陶器の釉薬の上に顔料で絵を描き、低温で再度焼成する技法。多色の華やかな絵付けを可能にする。
暮らしと季節
- 北前船 (きたまえぶね)
- 一七世紀から二〇世紀初頭まで、日本海側を往復した廻船。北海道産昆布を大阪まで運び、関西の昆布文化の基盤となった。だしの地理学も参照。
- 羅臼昆布 (らうすこんぶ)
- 北海道羅臼沖で採れる高級昆布。濃厚で香り高いだしが取れる。真昆布、利尻昆布などと並ぶ高級品種。
- 焼きあご (やきあご)
- トビウオを焼いて干した食材。長崎・福岡・佐賀で広く使われ、雑煮やラーメンのだしに用いられる。
- 二十四節気 (にじゅうしせっき)
- 古代中国に起源を持つ季節区分。立春、雨水、啓蟄……と、一年を二四等分する暦法。
- 七十二候 (しちじゅうにこう)
- 二十四節気の一つをさらに三等分した、約五日単位の季節区分。江戸前期に渋川春海が日本の気候に合わせて改訂した『本朝七十二候』が広く用いられている。七十二候を知ると一週間の見え方が変わるも参照。
- 和室 (わしつ)
- 畳を敷き、襖や障子で仕切られた日本式の居室。近年の新築マンションでは設置率が下がる一方、高級住宅では残り続けている。マンションのなかの和室も参照。
- 客間 (きゃくま)
- 来客を迎えるための部屋。和室が担ってきた代表的な機能のひとつ。祖父母世代の宿泊や年中行事の場として使われる。